モンティ・ホール問題

出典: Wikipedio


画像:Monty open door.svg
モンティ・ホール問題
3つのドアの内、当たりは1つ。1つのドアが外れとわかった場合、直感的には残り2枚の当たりの確率はそれぞれ1/2になるように思える

モンティ・ホール問題は、モンティ・ホール (Monty Hall、Maurice "Monty Hall" Halperin) がホストを務めるアメリカのゲームショー番組「Let's make a deal」の中で行われたあるゲームに由来する、次のような確率の問題である。この問題は「直感で正しいと思える解答と、論理的に正しい解答が異なる問題」の適例とされる。

「プレイヤーの前に3つのドアがあって、1つのドアの後ろには賞品の新車が、2つのドアの後ろにはヤギ(はずれを意味する)がいる。プレイヤーは新車のドアを当てると新車がもらえる。プレイヤーが1つのドアを選択した後、モンティが残りのドアのうちヤギがいるドアを開けてヤギを見せる。

ここでプレイヤーは最初に選んだドアを、残っている開けられていないドアに変更しても良いと言われる。プレイヤーはドアを変更すべきだろうか?」

1990年、ニュース雑誌の"Parade magazine" のコラムニスト、マリリン・ボス・サバントが読者の質問に「正解は『ドアを変更する』である。なぜなら、ドアを変更した場合には賞品を当てる確率が2倍になるからだ」と回答したところ、読者から「彼女の解答は間違っている」との約一万通の投書が殺到した。投書には千人近い博士号保持者からのものも含まれていた。

後述するように、彼女の答えは間違いではないものの、必ずしも完全な正解とも言えない。理論的な詳細については事後確率あるいはベイズの定理主観確率を参照のこと。


目次

ゲームのルール

  1. 3つのドア (A, B, C) に(景品、ヤギ、ヤギ)がランダムに入っている。
  2. プレイヤーはドアを1つ選ぶ。
  3. プレイヤーがどのドアを選んだかにかかわらず、ホストは残りのドアのうち1つを必ず開ける。
  4. ホストは景品のあるドアを知っていて、必ずヤギの入っているドアを開ける。もし、両方ともヤギだった場合はプレイヤーの見えないところでコインを投げて決める。

このうち (3) と (4) の条件が重要である。(3) が決められていなければ、このゲームはプレイヤーとホストの心理戦であり、確率の問題ではない。また、(4)の条件次第では答えが逆になったり、答えを定めることができなくなるので注意が必要である。 「モンティホール問題」として大騒ぎとなった原因は、ルール(3)と(4)について司会のモンティが何も説明しなかったからである。 以下の説明には、ルール(1)と(2)はもちろん、(3)と(4)も守られており、参加者はルール(1)~(4)を知っているという大前提がある。また、これらのルールを変えたらどうなるかという点についても説明する。

直感と理論の乖離

画像:Monty closed doors.svg
最初の状態。 プレイヤーが選んだドア1が当たりの確率は1/3、残り2枚のドアが当たりの確率は2/3。
画像:Monty open door chances.svg
モンティがドアを開いた後。 「残り2枚のドアが当たる確率・2/3」は変化していないが、そのうち1枚が消えたことで、2/3の確率はドア2に集中する

以下のように考えると直感でも理解しやすい。

・ゲームには100枚のドアが使われるとする。プレイヤーが最初のドアを選んだとき、この扉の当たりの確率はわずか1/100である。

・次に、正解を知っているモンティが残り99枚のドアのうち98枚を開けてヤギを見せる。

・最初にプレイヤーが選んだ1枚のドアと「正解を知っているモンティが最後まで開こうとしなかった残り99枚のうちのただ1枚のドア」の当たりの可能性が相違していることは直感で理解が可能であろう。簡単な図で示すと右のようになる。

計算

開けるドアを変更すると、プレイヤーが景品を獲得する確率が2倍になる根拠は以下のようになる。プレイヤーが初めに選んだドアをA、残りのドアをB、Cとする。プレイヤーが初めのドアを選んだ時点で、それぞれのドアに景品がある確率と、モンティがそれぞれのドアを開ける確率を表にすると次のようになる。

プレイヤーが初めのドアを選んだ時点の確率
  モンティが開けるドア合計
A(プレイヤー)BC
景品があるドア A01/61/61/3
B001/31/3
C01/301/3
合計01/21/21

ここでモンティがBのドアを開ける確率は全体の1/2であるが、これは、Aのドアに景品があってモンティがBのドアを開ける確率 (1/6)、Bのドアに景品があってモンティがBのドアを開ける確率 (0)、Cのドアに景品があってモンティがBのドアを開ける確率 (1/3) の合計である。表をよく見れば分かるとおり、もしモンティがBのドアを開けたならば、A(プレイヤーが初めに選んだドア)の後ろに景品がある確率に比べ、Cの後ろに景品がある確率が2倍なのは明らかである。

また、当たりのドアを選ぶ確率は 1/3、ハズレのドアを選ぶ確率は 2/3 である。当たりを選んだとき第2のドアで当たる確率は 0%、ハズレを選んだとき第2のドアで当たる確率は 100% である。したがって、

第2のドアで当たる確率 = (1/3)×0 + (2/3)×1 = 2/3

同様にして、

最初のドアで当たる確率 = (1/3)×1 + (2/3)×0 = 1/3

この結果を次のように考えることができる。第2のドアに替えた場合、最初に当たりだとハズレになり、逆にハズレだと当たりになる。したがって、最初のドアで「当たり、ハズレ、ハズレ」が起こっていたものが、第2のドアでは「ハズレ、当たり、当たり」が起こることになる。すなわち、第2のドアでは「当たり」と「ハズレ」の確率が完全に逆転する。

最初のドアでは「ハズレ」の方が多いので、当然「当たり」の方が多くなる第2のドアを選択すべきである。当たる確率は 1/3 から 2/3 へ増加し、1/3 増えることになる。

パラドックス

この問題はパラドックスであるといわれることがある。最初からドアが1つ開いた状態で、2つのドアから1つを選ぶという問題であったなら、確率は 1/2 である。それに対して、このゲームによってドアが1つ開いた状態になった場合には、確率は 1/3 と 2/3 になる。このように確率が異なることがパラドックスといわれる理由である。

しかし、これは確率の計算に矛盾があるわけではない。ドアが2択になった経緯を知っているか知らないかの情報の差がドアの評価に影響しているだけである。

ルールの変更

ルールを変更することで、この問題は理解しやすくなる。

変更ルール1

ルール (4) を次のように変更する。

  • ホストは景品のあるドアを知っている。コインを投げて残り2つのドアの片方を選ぶ。選んだドアが景品の場合はもう片方のドアに変更する。

このルールはコインを先に投げるところが元のルールと異なっているが、結局ドアの選び方に変化はないので、解答は「開けるドアを変更する」である。

変更ルール2

ルール (4) を次のように変更する。

  • ホストは景品のあるドアを知らない。コインを投げて残り2つのドアの片方を選ぶ。
  • 番組スタッフは景品のあるドアを知っていて、ホストが景品のあるドアを選択した場合はホストの選んだドアと選ばなかったドアの中身を入れ替える。

これは、前のルールで最後にホストがドアの選択を変更していたところをスタッフが代わりにやっているだけであり、元のルールと同じである。このようにルールを変更すれば、プレイヤーはドアを変更したほうがよいことが直感的に分かる。なぜなら、最後に残ったドアに景品が移動してくることはあっても、出ていくことはないからである。

確率を計算すると、プレイヤーが最初から正解していた確率は 1/3、ホストが正解して景品が移動した確率も 1/3、二人ともハズレであった確率も 1/3 である。景品は必ず最後の扉に移動するので、最後の扉に景品がある確率は 2/3 である。

変更ルール3

ここまでは問題を変えないようにルールの変更をしていたが、ここからの変更は問題を異なるものにする。

ルール (4) を次のように変更する。

  • ホストはコインを投げて残り2つのドアの片方を選ぶ。

このように変更すると、ホストが景品を当ててしまう場合もある。もし、偶然にもホストがヤギを引いたとすると、プレイヤーはドアを変更すべきだろうか?この場合の正解はどっちを選んでも確率は 1/2 となり、変更してもしなくてもよいのである。次のように考えるとよい。プレイヤーもホストも正解を知らないのだから、景品がどこに入っているかを最初に決めておく必要はなく、ホストがドアを開いた後で景品の位置を決めてもよい。ホストが選んだドアに景品が入らない確率は 2/3 であり、そのうち半分の 1/3 はプレイヤーが選んだドアに入る場合で、残り半分の 1/3 が最後のドアに入る場合である。よってドアを変更してもしなくても同じである。

変更ルール4

ルール (3) と (4) を変更して

  • ホストはプレイヤーの選択のいかんによらず、ヤギの入ったドアの片方を開ける。
  • ホストはコインを投げて2つのヤギのドアの片方を選ぶ。

このように変更すると、ホストがプレイヤーの選んだドアを開いてしまう場合がある。もし、偶然にもホストがプレイヤーの選ばなかったドアを開いたとすると、プレイヤーはドアを変更すべきだろうか?この場合も前のと同様に、ホストはプレイヤーの選択肢を知る必要はないのだから、プレイヤーが最後にドアを選んでも同じことである。ホストが選ばなかったドアを選ぶ確率は 2/3 であり、そのうち半分が景品、残り半分がヤギである。

変更ルール5

極端な例だが、ルール (3) と (4) を変更して

  • ホストは景品のあるドアを知っていて、プレイヤーが景品のあるドアを選んだ時に限り、ヤギの入ったドアを開ける。

このように変更すると、ホストがドアを開けない場合がある。もし、偶然にもホストがドアを開けたとすると、プレイヤーはドアを変更すべきだろうか?この場合は当然答えは「開けるドアを変更しない」である。このことから、ホストがドアを必ず開けるというルールは非常に重要だということが分かる。

ルール変更のまとめ

以上のことから、この問題の答えが「開けるドアを変更する」となるにはルール (3) と (4) が定まっていることが重要であることが分かる。実はもう一つ重要な前提がある。それは、この問題のルールをプレイヤーが知っているということである。この前提なしでは、プレイヤーにとってルールが定まっていないのと同じであり、「ドアを変更してもしなくても同じ」が答えになる。 従って、数百人の数学教授を含む約一万の読者が、「彼女の解答は間違っている」と投書したことは必ずしも間違いではない。何故なら、ホストのモンティがやったことは、プレイヤーが第1のドア選択をした後、他の2つのドアのうち1つを開け、ヤギを見せただけだからである。ホストのモンティは、もし、他の2つのドアの両方ともヤギだった場合はコインを投げてどちらかのドアを決めるなどとは一言も言っていないのである。

ここで、プレイヤーが最初に選択したドアAが当たりの場合に、司会者がドアB,Cからはずれのドアをどの確率で選択するかがいかに重要であるか具体的に説明する。司会者がドアBを選択する確率をxとすると、ドアBが開いた(もちろん外れである)という条件のもとで、ドアAが当たりである確率はx/(1+x)となる(もちろん、ドアCが当たりである確率は1/(1+x)である。)。

<計算法> ドアBが開いたということは、プレイヤーがドアCを選択したかドアAを選択したということである。ドアCを選択した場合は必ず(確率1で)ドアBを開き、ドアAを選択した場合は、確率xでドアBを開くのであるから、ドアBが開いたという条件で、ドアAが当たりである確率は、xを1+xで割れば求められる。

よって、確率xが0から1の間の数値を取るとすれば、ドアAが当たりである確率は0から1/2まで変化する(ドアCが当たりである確率は1から1/2まで変化する)。ドアB、Cをコイン投げ(x=1/2の確率)で選択したときに限って、ドアAが当たりである確率は1/3のまま(ドアCが当たりである確率は当初の1/3から2/3に上がる)と変化しないことに留意すべきである。すなわち、マリリン・ボス・サバントの答えは、この特殊な場合を想定(仮定)したものである。確かに、仮定としては常識的であるが、勝手にそのような仮定を当然の前提とするのは数学的ではない。

3囚人問題

モンティ・ホール問題と類似するものに3囚人問題がある。内容は以下のとおり。

ある監獄にA、B、Cという3人の政治犯がいて、それぞれ独房に入れられている。罪状はいずれも似たりよったりで、近々3人まとめて処刑される予定になっている。ところが恩赦が出て3人のうち1人だけ助かることになったという。誰が恩赦になるかは明かされておらず、それぞれの囚人が「私は助かるのか?」と聞いても看守は答えない。
囚人Aは一計を案じ、看守に向かってこう頼んだ。「私以外の2人のうち少なくとも1人は死刑になるはずだ。その者の名前が知りたい。私のことじゃないんだから教えてくれてもよいだろう?」すると看守は「Bは死刑になる」と教えてくれた。それを聞いた囚人Aは「これで助かる確率が1/3から1/2に上がった」とひそかに喜んだ。果たして囚人Aが喜んだのは正しいか?

モンティ・ホール問題の「ドア」が3囚人問題における「囚人」、「当たりのドア」が「恩赦」に対応しており、等価な問題であることが分かる。したがって、このケースではBCの死刑確率は2/3で、看守の回答の前後で変化していないため、Bの死刑が確定した時点でAが恩赦になる確率は1/3のまま、Cの恩赦確率は2/3へと変化していることになる。

この問題も、モンティホール問題と同じであり、看守が「Bは死刑になる」と答えた理由が重要である。仮に囚人Aが恩赦になる場合、看守が、死刑になるB、Cをどのような確率で選択するか、そして実際にどちらの名前を言うかによって、囚人Aの助かる確率は0から1/2まで変化する。B、Cをコイン投げ(1/2の確率)で選択したときに限って、囚人Aの助かる確率が1/3のままと変化しないことに留意すべきである。モンティ・ホール問題と異なるのは、看守がどのような回答をしたとしても、Aにはその回答を変える(AからCへと立場を変える)ことができないという点である。

上述の例を取れば、100人のうち1人だけが恩赦であるケースを考えると、Aが自分以外の99人のうち98人の死刑を知り、Bだけが恩赦か不明であると聞かされた場合、Bを含む99人の恩赦確率は100分の99から変化していないため、Bの恩赦の確率だけが100分の99へと変化していることになる。(この場合も、例えば、Aが恩赦であった場合には、看守が残り99人の囚人から98人を選ぶ99通りの組み合わせはランダムに選ぶこととするというような前提が必要である。看守が残り99人の囚人から98人を選ぶ99通りの組み合わせについて看守が選択する確率が変化するのであれば、Aの恩赦の確率は0から1/2の間で変化する。逆に言えば、Bの恩赦の確率も1/2から1の間で変化する。)

参考文献

<references/> 上述の3囚人問題は、モンティホール問題の原型でもあるが1950年頃に生まれたものであり、作者不詳のパラドックスとして知られている。 3囚人問題は、問題自体は簡単なように見えるものの、確率計算の結果が人間の直感と全く異なるため、これまで多くの研究がなされている。 特に日本において盛んに研究され、非常に多くの著書、論説、学会発表がある。以下にその一部を示す。 (もっとも、ゲームショー"Let's make a deal"のプロデューサーや司会のモンティはこの「3囚人問題」の存在を全く知らなかったものと思われる。 )

Lindley,D.V.(1971) Making Decisions,John Wiley

繁枡算男(1985) 「ベイズ統計入門」,東京大学出版会

市川伸一・下条信輔(1986)「直感的推論における"主観的定理":"3囚人の問題"の解決過程の分析から」,日本認知科学会第3回大会発表論文集,14

繁枡算男(1987)「3囚人問題」の具体化について」,日本心理学会第51回大会発表論文集,337

井原二郎(1987)「「3囚人問題」に関する直感の数理モデル」,日本認知科学会第4回大会発表論文集,24-25

佐伯胖(1987)「「3囚人問題」に関する視点論的分析」,日本認知科学会第4回大会発表論文集,26-27

竹市博臣(1988)「3囚人問題の認知構造」,日本認知科学会第5回大会発表論文集,90-91

市川伸一(1988)「3囚人問題の解決と理解の過程をめぐって」,日本認知科学会編『認知科学の発展』,講談社,Vol.1,1-32

守一雄(1988)「「3囚人問題」はなぜ難しいか」,信州大学教育学部紀要,第62号,45-50

市川伸一(1989)「3囚人問題の困難性-抽象記述による解明-」日本認知科学会R&I研究分科会資料,No.88-2,pp.1-12

Ichikawa,S.(1989) The role of isomorphic schematic representation in the comprehension of counterintuitive Bayesian problems. Journal of Mathematical Behavior,8,269-281

伊東裕司(1991)「3囚人問題の解決における頻度モデルの役割」,日本認知科学会テクニカルレポート,No.19

市川伸一(1997),「確率の理解を探る-3囚人問題とその周辺-」共立出版

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